2009年6月4日木曜日

archived articles(2009): Carl Zeiss Jena Pancolar 50mm F1.8(M42)

この記事は改定されました。こちらに改訂版があります
カールツァイス(イエナ)のエース!
はたして実力は?
 パンコラーは旧東ドイツのカール・ツァイス(イエナ)によって1960年頃から製造されたガウス型標準~中望遠レンズのブランド名であり、50mm/F1.8, 50mm/F2, 55mm/F1.4, 75mm/F1.4, 80mm/F1.8が存在する。このうち80mmと75mmとは流通量が少なくレアなため、高額で取引されている。75mm F1.4に至っては製造本数550と極僅かで、市場に出回ることはまずない。今回紹介するゼブラタイプの50mm/F1.8は中古市場に比較的多く流通し価格も安定しているため入手は容易だ。この時代のレンズはガラス素材にトリウムという放射性物質を混ぜ屈折率を向上させる技術が採用されていた。この種の放射能レンズは解像力や色収差の補正に優れていたと言われている。

フィルター径49mm 重量 最短撮影距離35cm M42-mount
Pancolar + KONI FILTER UV SL39 C
パンコラーはトリウムの含有により、ガラスが黄色いものが多く出回っている。この黄色いガラスはモノクロ写真が幅を利かせていた時代に、空などをいい色合いで表現するのに有効だったそうだ。レンズを介してファインダーから見た実像は黄色味を帯びているものの、デジタルカメラがカラーバランスを自動補正してくれるため、撮影結果は僅かに黄色い程度でありフォトレタッチで充分リカバーできる。本品はゼブラ柄のデザインを採用したシングルコーティング仕様の前期タイプである。1970年頃には黒鏡胴のデザインを纏い、ガラス面にマルチコーティング処理を施した後期型が現れている。
 撮影結果は発色が濃厚でコントラストは充分に高い。また、この時代のツァイス・イエナらしい立体感よく出る描写が得られている。最短撮影距離が35cmと短いため、草花をアップで撮影するとたいへん良く写る。
黄色いレンズを通してみたファインダーの色

コニフィルターでドレスアップしてみた。前玉が鏡筒の内側に収まる構造のため良く似合う
入手の経緯
2008年6月にe-Bayにてイギリスの業者から即決落札した。商品の状態についてはエクセレントという記述があるのみ。夏のボーナスが近かったため、相場より高かったものの物欲に支配されついポチッとやってしまった。国内では15000円位までが相場のようだ。スナイプ入札にしとけばよかった。

 
写りはなかなか良い
商品は10日後に届いた。ガラスの黄変ぶりには「アハハ」としか言いようがなかったが、故障ではないのでクレームは御法度だ。しかし、いざ撮影してみるとこれが意外によく写る。いろいろ調べた結果、黄色いガラスの描写の方を好むユーザーもいるらしい。ここ1ケ月くらい、同時代につくられた1960年頃の安価な癖玉ばかり使っていたためだろうか、このレンズの雰囲気を取り込む力、コントラストの高さには一歩抜け出たものを感じた。ドイツのトップブランドを冠するツァイスの技術力が数ある中堅メーカーに比べ優れていたことを肌で直接感じた。

試写テスト
本品の前評判は下記の通り。
 ・発色は濃厚でコントラストが高い。
 ・中央は解像度が高く開放からシャープな描写が得られる。
 ・立体感のある描写が得られる。
 初夏のポカポカした様子やスカッと晴れた空、梅雨の湿った光景や重苦しい空など雰囲気がよく出るレンズだなと思った。 ボケも自然だが、開放絞りで近景を撮影する場合には収差が増し、時々背景のボケがざわざわと煩いときもあるのでシーン選びに注意したほうがいいだろう。不安な場合は一段絞り撮影するとよい。
こってり濃厚な描写

描写はかなり濃厚だ。黄変したガラスのせいだろうが、画像は多少黄色みがかっている 
開放での撮影の場合、背景のボケがかなり煩くなる場合がある
 

★立体感、シャープネス、コントラスト
このような立体感のある描写はこのレンズの長所といえる
コントラストの高さは充分だ
  絞り開放においてもシャープな描写が得られる
コントラストが高く、暗部から明部まで階調表現に優れている
★雰囲気を取り込む
雨の帝国劇場。梅雨の季節の雰囲気がしっかり捉えられた

初夏のいい雰囲気が滲みでる
 
雰囲気を出したいならパンコラーだ!

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